技術部 藤吉
川崎工場において、ZnNiめっきの立ち上げをさせて頂きました。
立ち上げまで、川崎工場の皆様、横浜10G、営業部の皆様より、多くのご協力を頂き、量産まで進める事が出来ました。
今回のコラムでは、立ち上げの道のりで感じた事や反省点を紹介させて頂きます。
まずは、自社に導入したZnNiめっきのコンセプトについて、紹介します。

■ ZnNiめっき立ち上げのコンセプト
ZnNiめっきの特徴は、高耐食性を有し、通常のZnめっきとは比較にならない耐食性を有します。
耐食性が良いのに世の中に広まらない理由は、コストが高い事が大きな要因です。
要因として、「薬品コスト」「めっき速度が遅い」「排水性が悪い」があります。
コスト要因を改善し、コストを圧倒的に抑える事が出来るのであれば、自社のシェア拡大に繋がります。
そこで、ZnNiめっきラインのコンセプトは、コスト要因を改善し、他めっきメーカーに勝つ事を前提に作り上げたラインです。
■ 立ち上げ迄の苦労
結論としては、コスト要因をクリアーしZnNiめっきラインは立ち上がりました。
但し、立ち上がる迄に、様々な問題、失敗がありました。その失敗談を、皆様に読んで頂く事により、今後の参考になればと考え、記載させて頂きました。
【失敗談】
今回採用したZnNiめっき液は、世界で実績がある薬品を選定しました。
また、川崎工場ZnNiめっきラインの「めっき液」と「クロメート液」のみの変更であり、ZnNiめっきとしての実績はありました。そこに、「失敗」が生まれました。
失敗① 「実績があるから大丈夫」
上記の『実績があるから大丈夫』との慢心より、立ち上げ期間は、長くても1ヵ月程度と考えておりました。結論は、約3ヵ月も掛かってしまいました。(10/23~2/9)
実際には、様々な問題が発生しても、速効性の対策は打てず、1つ1つの問題点に時間を掛ける結果になってしまいました。何故、予定よりも長く掛かったのか、以下で説明します。
失敗② 「今まで問題なかったから大丈夫」
一つの例とし、「バレル痕」で説明します。
バレルに張り付く製品に「バレル痕」が発生するのですが、全ての製品に発生しました。めっきの商品価値としては、絶望的でした。
今まで利用していた設備なので、リード線やバレルの回転速度は、『今まで問題なかったから大丈夫』と後回しにしました。
めっき液に時間を掛け検討しましたが、リード線、バレル回転速度の条件を変えたら、ほとんどの製品でバレル痕は無くなり、解決しました。
失敗③ 「出てくる問題に右往左往して、やらなければならない事を行わない」
ZnNiめっき立ち上げで、様々な問題が発生しました。
(発生した問題)
・バレル痕 ・外観が悪い ・密着不良 ・添加剤の分解 ・再処理不可 ・設備トラブル・・・・・・・
『出てくる問題に右往左往し、やらなければならない事を後まわし』にし、立ち上げが一向に進まなかったです。考え方は様々ですが、立ち上げに関しては、核となる条件を先に決めて計画を作るべきです。それを決めてから、発生した問題点を解決する方が良いです。核となる条件が決まれば、発生した問題のみに集中的に力を注ぐ事が出来るからです。
【失敗からの脱出】
① 一人で抱え込まない。
問題が発生すると、どうしてもそこに目線が行きがちです。また、思い込みで行う傾向があります。
問題が発生した時は、報告する事、相談する事により、間違いが分かり、方向性がしっかりしてきます。
但し、可能な限り「データー」や「写真」等で具体的に問題点を報告する必要があります。報告を受ける側は、分からない状態で聞きます。口頭だけでは、間違って伝える可能性もあり危険です。
② 優先順位の把握
計画を立て、優先順位の把握が必要です。
但し、計画を立ててもその通りに進むことはありません。
発生した問題に対して、立ち止まるのか、進むのかの判断は必要です。その判断も自分の考えを持ち、上司と相談すると、スムーズに進めると考えます。
③ いままでそうだったから大丈夫は、大丈夫では無い。
ラインは、いままでの経験や改善を元に、作りこまれています。ただし、何故その様な仕様になっているのか確認する必要があります。いままでそうだったからでは、新しい取り組みの障害になる可能性があります。
また、いままでそうだったからでは、進歩が無く、成長できません。
当初は、上手く行かない事の連続で、立ち上げが出来るのか不安でした。
問題発生時には、周りの協力があり、一歩一歩着実に進んで行きました。一人では、絶対に不可能でした。
但し、今後は、上記の失敗は繰り返さず、仕事を少しでも円滑に進めて行きます。
最後に、立ち上げに協力して頂きました皆様に、感謝申し上げます。
最後まで読んで頂いて、有難う御座いました。
(参 考)
ZnNiめっき外観
特に内周部の色だしにかなり苦労しました。
pH、処理温度、乾燥時間、Ni組成、処理時間の組み合わせで、正常な外観がコンスタントに出せる事が出来ました。
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|---|---|
| 外観異常
外周部:紫 内周部:オレンジ |
外観正常
外周部:青 内周部:青+紫 |

